Bonjour ゆりかです。
前回のブログに引続き、
有名なフランス児童文学『眠れる森の美女』La Belle au bois dormantからご紹介します。
画像:wikipedia.frより
ロマンティックというよりも、むしろツッコミどころ満載な物語…?という視点から、
今日は王女が眠りにつくシーンを挙げてみましょう。
呪いのとおり、糸車に指を刺して百年の眠りについた王女。
確か、ディズニーのアニメーション映画では、
「起きたときに王女が寂しくないように、他の従者、王と王妃も一緒に眠りにつく」
と設定されていたと思います。
しかし、原作では「百年の眠りから覚めたときに、
王女の身の回りのお世話をするために、他の従者たちも眠りにつく」のです。
しかも、彼女の両親である王と王妃は、ベッドで眠る娘を城に残し、去っていきます。
さすがペロー先生。貴族に仕えていただけあり、主従関係をしっかりと表現しています。
王女の寂しさを和らげるという理由も、もちろんあったでしょうが、
主人に奉公することの重要性を強調したのでしょう。
文学をとおして、異国の文化を追体験できるというのは、実に興味深いものです。
しかし同時に、なぜ王と王妃は城に残らなかったのだろう?と疑問を抱いてしまいます・・・
百年後、目覚めるであろう娘に会いたくはないのでしょうか?
どんな想いだったのでしょう・・・
そして、百年って…と言わずにはいられません。長すぎです!
せめて五十年くらいでも良かったのでは…と思わずにはいられません!!
現代の感覚だと、目覚めた時に王女との再会を両親である国王と王后が誰よりも望むだろうと思ってしまいますよね。
だからこそ、なぜ可愛い我が子を一人城に残して行くのか、
と読者にはモヤモヤとした疑問が残ります。
これは、わたしの推測ですが、“百年”という時間がキーワードになっているので…と考えます。
この作品が描かれた17世紀において、
国王にとって、自分の土地、領民を継続的かつ安定的に統治することが最重要課題でした。
長期間、国王の支配力を保つために取られた政策として、世襲制による統治は効果的だったのでしょう。
(ペローがこの作品をまとめた時代は、ブルボン王朝による世襲王朝が確立した時代です。)
呪いによって王女が眠りにつく期間は百年。
どんな方法をもってしても、人間の寿命では太刀打ちできません。
国の支配力を盤石にするため、後世のことは王女に託したのでしょう。
国ひいては自身の娘を護るための英断であった、と言えるでしょう。
歴史的背景を知らずに読んでいた頃は、「え、王さま冷たくない…?」と捉えていました😅
眠りそのものに続いて注目したいのは、“王女の眠りは死ではない”ということです。
死んでしまったら物語が終わってしまいすよね。
冗談はさておき、一時的な眠りは何を意味するのでしょうか?
時代はかなり遡りますが、
『アーサー王物語』においても、同様に王が長い一時的な眠りにつく場面があり、王=不滅の存在”といった意味を表現しているという説があります。
一時の眠り=死ぬわけではない=一時的な休息…と考えてみると、
“一定期間、統治者は不在になるものの、後継者の登場が確実に約束されている”、
と考えられるのです。
(少し飛躍しているかもしれませんが…)
このように考えると、王女の眠りは一時の休息であり、復活をも含意していると言えるでしょう。
つまり、国王が望んだ世襲制がどうにか継続できるわけです。
宮廷を出入りしたペローは、物語にこのような展開を用意することで、王朝の永続性を願ったのでしょう。
やはり歴史と文学は切っても切れない、見えない絆で結ばれているのだなぁと感じる、今日この頃です。
皆さんはこのシーンをどのように解釈されるでしょうか?
実際に読んでみて、当時のフランス社会を想像してみると、
小旅行&タイムスリップできるようなワクワクした感覚を味わえます。
さてさて次回は最終回。どんなシーンか乞うご期待!
*参考図書*
1)『完訳 ペロー童話集』(岩波文庫)
2)Charles Perrault, Contes (le livre de poche)
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