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『眠れる森の美女』原作をフランス語で読む 最終回

Bonjour ゆりかです。
 
今日は”『眠れる森の美女』La Belle au bois dormantをフランス語で読む”最終回。


画像:wikipedia.frより

二回のブログはご覧頂けましたか? 
最終回は、皆さんお待ちかね(?)の王子登場のシーンをご紹介したいと思います!!

百年後、この眠る王女の噂を聞きつけた隣国の王子は、
意気込んで彼女を救うために城へと馳せ参じます。

なぜ王子が意気込んだのか?
・・・それは愛amourと名誉心gloireにかられたから。 
会ったこともなく、噂話を聞いただけの相手に恋をするって…
恋に落ちるのがあまりにも早すぎて、ツッコむ言葉も見つかりません!!



長い眠りに突入した王女のいるこの城(Château/Palais)は、仙女の魔法によって木々や大量の枝に覆い囲まれます。

映画では、この仕掛けに加え、意地悪な仙女(マレフィセント)が大蛇となり、王子の行く手を阻みます。
が、原作には大蛇はおろか、物語冒頭でのあの呪い以来、マレフィセントは登場しません。

おそらく、映画化する際に“悪の魔女であること”を強調するために設定を加筆したのでしょう。
元々、キリスト教世界では蛇は“悪魔の使い”というイメージがあるので、その影響もあるのでしょう。

障害があるほど恋心が燃えるといいますが、この場面では木々という障害物を排除することが王子に課題として提示されます。
木々を剣でなぎ倒すわけですが、きっと恐ろしく時間がかかったのではないだろうか…と思います。
そのじれったさが好きな人に会いたいと思う気持ちを増大させたのでしょうね。

やっと城のなかへ到達し、着々と彼女のいる寝室へと歩を進める王子。
ベッドに横たわる、愛する王女の顔をひと目確かめようと、ひざまずくと王女が目を覚まします。

え…?キスで起きるのではないのですね…?
誰ですか?!キスで目覚めるだなんて言ったのは…。

この運命のキスで目覚めるという設定は、おそらく映画ゆえでしょう。
ペローによりこの作品が描かれた当時、結婚前の女子は貞淑であるべきだと考えられていました。
結婚後は夫に忠誠を誓い、一生添い遂げることこそ好ましい、ともされていました。

呪いによって眠りについた15~16歳頃の王女には、純真無垢かつ貞淑さ、
そして異性に対する初々しさが当然求められるわけです。
だからこそ、当時のフランスの貴族社会では、キスで目覚めるという設定はNGだと判断したのでしょう。

ただひとつ、どのように考えても奇妙なのは時間の経過です。

百年の眠りについているので、時代が一世紀先であることは確かです。
しかし、目覚めた王女や従者たちの年齢は、眠った時点でストップしている…
もし順調に人物たちの年齢も経過していたら、王女の推定年齢は115歳くらいということになります。
そうなると、もはやロマンティックなおとぎ話ではなく、老女と青年の物語になってしまいますよね…。
前回のブログで触れたように、この百年の眠りには意味があるわけです。
そのことを踏まえて考えてみたのですが…
時間の経過まで止めてしまうとは…おそるべし、おとぎ話マジックです!!



時間の経過に対する弊害(?)は登場人物にも影響しているようで、
この王子、目覚めた王女の服装について、なんて古臭い時代のものだろう、と意外と心無い感想を王女に抱くのです。
まあ百年の時差がありますから、仕方ないのですが…
そうです、意外に辛口な王子なのです(笑)
しかし、服装の古臭さ以上に、王女に恋をしていたので気にならなかったようです。
やはり、愛は偉大なのですね…

最後に、この物語を通して作者ペローが伝えたかった教訓moralitéをご紹介しておきましょう。

“容姿端麗で性格の穏やかな男性、しかも莫大な資産を持つ男性を結婚するために、じっと待つことは実に自然なことだ。でも、眠りながら途方もない時間(=百年のこと)を、そのために費やすことなど本当にできるのだろうか?運命で結ばれた結婚相手ならば、出会う時期やタイミングを問わず、安定した幸せな家庭を築けるのである。このことは長年、言われていることではあるが、結婚そのものに非常に熱い思いを抱く女性たちは聞く耳を持たないのである。”

本当に何百年も前に書かれた言葉かしら?と思ってしまいます。
焦らなくても、いずれ運命の相手は現れる、というメッセージは、現代社会こそ響くのではないでしょうか。
さすが愛の国フランスの知識人だなぁとしみじみ感じます。

以上のように三回にわたって、わたしが読了後に抱いた感想を中心に、
ペローによる原作『眠れる森の美女』についてご紹介してみました。

知っているはずの物語でも、実は知らないことがたくさん詰まっているフランス児童文学。

皆さんもぜひ読んで、お気に入りの作品を見つけてみてくださいね。

ではA bientôt !
 
*参考図書*
1)『完訳 ペロー童話集』(岩波文庫)
2)Charles Perrault, Contes (le livre de poche)

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DATE : 2019.11.18